トラヴィア/ED後/イザ←主で5のお題5「信じつづける」

眠らない星空

『眠れないなら星を数えるといい。いいか、ただ数えるだけじゃないぞ。星をひとつひとつ辿るようにしていくんだ。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、……ほら、大きなダイヤができた。』
『ダイヤ? ……私には、ただの四角形にしか見えない。』
『それならそれでいいさ。だったらもっといっぱい使って何か描けばいい。ひとつ、ふたつ、みっつ、……』
『……楽しくありません、グスフィ。』
『おー、それでもいい。つまんねーことやってりゃ、そのうち頭も寝たくなるだろ。それまで待ってればいいんだよ。星を数えんのはその時間つぶしだ。』

「…、せんじゅうしち、せんじゅうはち、せんじゅうく、……」
「…、にせんしちじゅうし、にせんしちじゅうご、にせんしちじゅうろく、…」
「…、いちまんさんじゅうご、いちまんさんじゅうろく、いちまんさんじゅうしち、……あっ、」
 失敗が、いったい何度目になるか分からない。星を辿る指は力なく降ろされる。星を繋いできた線は、これ以上もうどこにも伸ばすことができなくなってしまった。
「(やはり私には、無理なのかしら……。絵の才能も、優れた想像力もない。星を数えて、)」
「(星を数えて、師の姿を描き出そうとするなんて。)」
 無理だと思った。けれども、あの数え切れない光の中に、確かに師が眠っているのならば。
 それならば、イメージする力に乏しい自分にでも師の姿を描くことができるかもしれない。トラヴィアはそうも思ったのだ。
「(…無理、でしょうね。星も夜空も途方もなさ過ぎる。いつかは、あんなに近くに感じられたのに。)」
 羽がないから飛ぶことができない。単純なことだ。
「(ねえ、そこにいる誰かひとりでも、私の声を聞くことができる?)」
 できる者などいないと知っていた。だが、いいや、だから、心の中で語りかけた。
「(私は世界を救ったかもしれないけれど、それと共に、大罪人でもあるの。)」
「(私は償うことのできない罪を犯した。そう、それこそ、一生をかけても。)」
「(私は師を信じることができなかった。)」
「(私は師を討とうと決意してしまった。)」
「(私は師を死なせてしまった。)」
 考える頭は、まるで何か薄い雲がかかったように、ぼんやりとしていた。
「(私にもっと力があれば、いいえ、私があのとき気をしっかり持っていれば。暗黒皇帝を討ち損じ、師を死なせてしまうことなどなかった。あのとき師が私を守ろうと無理にからだを動かしたから、かろうじて彼を繋ぎとめていたものがほつれてしまったんだ。私さえ、私さえ、ちゃんとしていれば。私の怒りは、心は、愚か過ぎて、煮て一から作り直したいくらいだ……)」
「(私が師を信じ続けてさえいれば。私はあのとき驚きのあまり立ち竦むこともなかった。私はあのとき剣を握る手を鈍らせることもなかった。私はあのとき、師を心配して慌てて駆け寄ることもなかった。私は弟子としてあまりに愚かだった。)」
 空に輝く星は、この数時間のあいだに全て数えつくしてしまった。
「(私もあの中へ入りたい。そうすればみんな私を罰してくれる。でも私は今は人間だから、たとえ死んだって星になることはできない。)」
 トラヴィアは空を見上げることをやめた。ずっと上を向いていたので凝り固まってしまった首の筋をほぐして、無造作に横になる。すると、旅の共の妖精が翼を休めて寝入っている様子が目に入った。少し安心する。不安が倍増する。



「(星を数えたって、グスフィ、寝たくなんてなれないよ。)」
「(涙が止まらないの。星空なんて大嫌い。みんな私を責めるの。師を死なせてしまった私を。)」









 天使というのは元々は神が創ったものであり、神はそれらを、自分の目的を遂行するための道具程度にしか考えていなかったのでは、と思っています。
 そして、けれども限界まで人に似せて作られた天使は、人を見て何千年何万年と時を経るうち、その心までもが人間に似てしまったのです。
 女神の果実をこの目で見たいとごねる子供の天使や、人間の行動に疑問を抱く天使など。

 その点トラヴィアは自身の責務だけをひたすらに考え忠実に行動する、ある意味非常に天使らしい、オーソドックスな天使ですが、
 もともと、人間じみた点は持ち合わせていたんでしょうね。そういった面をひた隠しにしていることすらまた人間らしい。
 まあ、そこまで言うと、「人間とは何ぞや?」という問いにまでいっちゃうんですが!


 お題を制覇したので、どうしようかと、思っています。イザ→主にいく?どうする?
 ゆっくり考えます。
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